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理想の上下関係

上下関係ってなかなか難しい。

 

先輩後輩関係はなおのこと、師弟関係に近いような上司と部下の関係はもっと難しい。先輩後輩関係では理想の上下関係なんてそこまで考えたりしないのが大概だと思うが、師弟関係くらいになってくると、上司の側にも理想の上下関係があり、部下の側にも理想の上下関係があることが多くなるように思う。例えば上司が部下に対して絶対服従を求めたり、部下が上司に対して絶大な権威を求めたり……上司も部下もお互いに対して何らかの理想を求めることはそんなに変な話ではないと思う。

 

上司と部下、お互いの理想像がマッチするのであればそれ以上幸福なことはない。上記の例であれば、上司はガハハと笑いながら傲岸不遜に振舞っていればいいし、部下はヘイこら言いながら平身低頭で上司の指示に従っていればい。両者ウィンウィン、客観的にはどうであれ、少なくとも当事者間には何の問題もないわけである。

 

とはいえ万事が全て上の例のようになるわけではない。上司と部下、それぞれの両者に対する理想像が噛み合わないこともある。上司が部下に絶対服従を求めていても、部下が上司に対して「部下と対等な目線に立ちながら協力して物事を進める上司」の理想像を持っていたとすれば、両者の関係性は地獄の様相を呈するわけだ。

 

無論、僕が今日上下関係について難しいなぁと感じたのは、そういうことだ。端的に言えば、僕が思う「理想の指導教授-院生関係」と指導教授が考える「理想の指導教授-院生関係」に若干の乖離が生じていて、それが今日露見した。誤解を避けるために断っておくが、僕の指導教授は上で例に挙げたようなクソ上司とは似ても似つかない、とても尊敬できる上司である。

 

僕自身は指導教授に対して、強い尊敬の念を持っている。だからこそ、私見を軽々しく口にすることは恐れ多いと思っているし、研究とは関係のないことについて愚痴を述べることなんてもってのほかだと考えている。そして指導教授には、研究の場では第一線でマルチに活躍し、教育の場においては大講義室で全ての学生の視線を釘付けにするような講義を行う、ある種のカリスマであって欲しいと望んでいる。上司に権威を求めるという意味では、冒頭に挙げた部下の姿に近いのかもしれない。

 

しかし今日指導教授から伝えられた内容は、以下のようなものだった。普段君(筆者)は自らのことについて多くを口にしないため、研究にせよ私生活にせよ、普段何を考え、どのような行動を取っているのかが見当もつかない。私(教授)自身も研究や教育についてストレスを感じており、その愚痴を共有する相手が欲しい。君とは5年以上の付き合いになるのだから、もっと自身について語るべきであるし、もう少し私の愚痴を聞くべきである。過去の院生と比較して君に圧倒的に足りないのは、指導教授と情報を共有しようという姿勢である、と。

 

教授から以上の話を聞きながら、私は上下関係の難しさというものを強く痛感させられた。私が持つ理想の指導教授像と、指導教授が持つ理想の院生像がかけ離れていたからである。それと同時に、5年以上も指導教授の下にいながら、教授がそのように考えていたということについて全く知らなかったということに情けなさを感じた。いや、もしかしたら気づいていたのかもしれない。指導教授の愚痴を聞くことで、僕の中にある「理想の指導教授像」が持つカリスマ性が削がれていくことを無意識に恐れていたのかもしれない。何にせよ、自身の馬鹿さ加減にくらくらしたものだった。

 

とにもかくにも、これから僕は上下関係についてもう一度考え直さなければならないのだろう。思えばこれまで、僕は目上の人との付き合い方が天才的に下手だった。自分の中ではその理由について、「自分は長男だから」と適当な言い訳をして逃げ回ってきたが、もう人生四半世紀を過ぎようとする中ではそうも言ってられない。今回、指導教授から「君は目上の人に対して直接自分の意見を主張しないから」という指摘をいただいた。もちろん自分の意見を主張したからと言って上司との付き合い方が劇的に改善されるわけではないと思うが、これ自体はそこまで難しいことではない。今日から少しずつ自己主張をしていこうと思った次第である。